理事長挨拶

フロンティア精神で土砂災害軽減に取り組む

 わが国は急峻な地形や脆弱な地質、多数の断層や破砕帯を有しており、世界的にも土砂災害が発生しやすい条件下に置かれています。

   砂防の歴史は古く、山林伐採等の行為制限、植林や土石等による土留工にはじまり、明治以降、砂防法などの制定に伴い、「砂防指定地」、「地すべり防止区域」、「急傾斜地崩壊危険区域」が指定され、砂防設備や地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設が整備されてきました。また土砂災害防止法による基礎調査が実施され、土砂災害警戒区域等の指定やハザードマップの作成も進められてきました。一方で近年、大規模な地震が発生する中にあって気候変動の影響により、自然災害の頻発化・激甚化に伴い土砂災害発生件数は増加傾向にあり、また土砂・洪水氾濫など発生形態が多様化・複雑化しています。残念ながら、毎年、全国各地で豪雨や地震、火山活動などによって土砂災害が発生し、尊いいのちが失われ、地域のくらし・経済活動に大きな影響を及ぼしています。
 砂防フロンティア整備推進機構は、砂防指定地等及びその周辺の保全整備と砂防事業等に関連する地域活性化のための調査研究を行い、その成果を幅広く社会に提供すること等を目的とした財団法人として平成3年10月18日に設立され、平成24年4月1日に一般財団法人となって現在に至っています。

 

 設立以来、砂防指定地等の指定・管理と利活用、健全度把握や評価、修繕改築方法を踏まえた予防保全型管理の導入や土砂活用を含む除石計画や管理用道路計画策定など砂防設備等の保全・管理・長寿命化計画策定、天然ダム(河道閉塞)等大規模土砂災害に係る危機管理体制の構築、要配慮者の避難行動と地区防災計画等の策定支援を通じた地域防災力向上、歴史的砂防施設の保全・利活用と文化財登録支援、土砂災害史料の整理、里山地域の整備・活性化、砂防堰堤を活用した小水力発電等普及の支援、土砂災害警戒区域等の指定・照査・警戒避難体制の構築等に関する調査研究について、新たな行政課題や地域ニーズに対応しながら取り組んでいます。土砂災害警戒区域の指定にあたっては、現地確認した結果に対し砂防学会の支援による照査を行っています。永年にわたって全国的な事例に関与してきた経験を活かし都道府県の指定作業を積極的に支援してまいります。
 また、都道府県や国土交通省砂防事務所が保有する砂防関連情報等を適正に管理活用するために設置した砂防管理情報センター(Sabo D-mac)において、土砂災害警戒区域等管理システム、砂防関連情報管理システムの開発等、砂防情報の管理に関する調査研究にも取り組んでいます。

 

 近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、新技術の活用を積極的に進めています。衛星画像やAIを活用した土地改変区域の抽出、砂防指定地内における盛土等の管理許可審査、施設の3次元データやUAVを活用した砂防関係施設の管理、ミュオグラフィーの応用など、新たなニーズへの対応や生産性向上に向けて取り組んでまいります。また、砂防指定地の廃止・再指定の研究も引き続き実施してまいります。GX(グリーントランスフォーメーション)の動きも加速しています。砂防指定地内の樹林地整備による二酸化炭素吸収効果とカーボンクレジット、及びグリーンベルトに関する研究を通じて、砂防分野の脱炭素、みどりを活用したまちづくりなど新たな領域にも挑戦してまいります。 

 一方、公益目的事業として、(一財)日本宝くじ協会の助成金を活用し、土砂災害警戒区域等を明示した看板を現地に設置する事業に取り組むとともに、基金を活用し、砂防関係事業全般の発展に資する活動や砂防に係るボランティア活動、砂防分野に係る人材育成、事例集や手引きを活用した砂防教育などを積極的に支援しています。

 

 当機構は、砂防に関する豊かな経験と実績を持つ多くの人材を擁しています。職員一同、一丸となって日々研鑽に努め、公益目的事業を着実に推進するとともに、これまで蓄積されてきた情報や技術を活かしながら、国土強靭化と安全で活力ある地域づくりに向けて、フロンティア精神をもって新たな時代に対応できる調査研究を重ね、その成果を広く社会に還元する活動を行ってまいります。

 

 一般財団法人砂防フロンティア整備推進機構を更にご活用いただくとともに、関係各位の一層のご指導・ご鞭撻を宜しくお願いいたします。

 

 


一般財団法人砂防フロンティア整備推進機構 
理事長 今井 一之